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世界のおもちゃスーパートイザラス!!
世界最大のおもちゃディスカウントショップ!!
トイザラスは1957年にアメリカで広がっていた、多くのものを低価格・短時間で購入できるディスカウントショップの手法をおもちゃ市場に取り入れた企業です。
1988年にはアメリカの2割のシェアを取り「世界最大のおもちゃスーパー」として名をはせました!
その頃のトイザラスは周りのおもちゃ屋を消滅させるほどの強さを持っており、1991年に日本にも「トイザらス」として参入し、日米の貿易摩擦になる程のインパクトでした。
ちなみに「ら」とひらがなで書くのは子供が書いたという表現が有力です。
しかし、順調なトイザラス突然暗雲が訪れます・・・ネットショッピングのe-コマース事業です!!
瞬く間に広まったネットショッピング
ネット販売にいち早く参入した「イートイズ」はサイトの使いやすさも品ぞろえも圧倒的によく、ラインナップは10倍以上!!トイザラスより格段に強くなりおもちゃ需要を搔っ攫いました!!
トイザラスも負けじとすぐにネット販売に力を入れようとしましたが、商品の遅配による訴訟や既存店舗の配慮を優先するなどで出鼻を完全にくじかれました。
ちゃんとトイザらス・ドット・コムを投資して立ち上げたのですが、価格決定権を与えずSEOが愛想尽かす状態でした・・・
その後Amazonと長期契約を組むも黒字化にならず、AmazonVSイーベイが加熱して、アマゾンが一方的にトイザラスとの契約を打ち切る形となりました。
アマゾンから解約金はもらえたものの根本的な問題解決が完全に振り出しに戻され、価格競争にも破れ、買収にて再起を目指すも負債により投資がままならず倒産となりました。
アメリカの小売り業としては3番目に大きい倒産です。
トイザラスが敗れた敗因
新しい市場はまだ小さい
一つ目が「ルールが変わっても既存のルール前提での正しい対応を行った」です。
ネット販売が本格してきた時にも、既存の店の経営をこだわるあまり参入が遅れました。
経営陣の腰が重いというのがありましたが、ではなぜ重かったのでしょうか?
それは顧客の存在です。
いわば「モノ言う株主」、出来たばかりのネット販売の事業は市場が小さく、これから本当に大きくなるのか不明でした。
逆に店舗販売はすでに規模が大きく、シェアも大きく利益の額が桁違いでした。
投資家の皆さんは大企業に安定的なリターンを求めますか?それとも、シェアを持っている大きい市場を放り出し挑戦的なことをやってほしいですか?
投資家という顧客から見ればすでに市場が大きいところで安定的な利益を求めているので既存の経営を行うが正解となってしまいます。
これが一つ目の問題「ルールが変わっても既存のルール前提での正しい対応を行った」です。
しかし、この問題はイノベーションの変化によってどの企業にも襲い掛かってくる可能性があります。
なので実は割とメジャーな問題です。
トイザラスのさらなる間違い
ではトイザラスが悪化したのはなぜか・・
それは一つ目の問題ともう一つの問題が組み合わさってしまったからです。
その原因が「他人任せで対応してしまった」ことです。
トイザラス倒産のもう一つの原因
他人任せで対応してしまった
ネット販売が本格してきた時にも、トイザラスは既存の店の経営にこだわってしまいました。
そしてもう一つの理由が上にも書きましたとおり「他人任せで対応してしまった」ことです。
新たなルールの存在を認識することが遅れるのはよっぽどいろんなことに挑戦している企業でなければ回避するのは難しいです。
ならば、新しいルールができたと認識した後の対応でなんとか差を縮めないとダメですね。
結果論ですが、トイザラスのネット販売事業をAmazonに完全に任せきりにしてしまったことと、新しいルールが浸透し始めた時に既存のルールで正しい対応を行うという「組み合わせコンボ」によって倒産したと言っても間違いではありません。
Amazonだからもう安心?
と、ここで皆さん一つ疑問に思いませんか?
トイザラスがAmazonに完全に任せてしまったことが原因と言うところです。
Amzonと言えば、皆さん知っての通り米国のインターネット上で、ものやサービスなどを売買したり取引する「EC」No.1企業です。
クラウドサービスである「AWS」シェアもNo.1です。
もしも皆さんがトイザラスがネット市場に遅れていかれると不安の中、Amzonと連携!!というニュースが入ったらどう思いますか?
きっと、「あのAmazonと連携したからもう大丈夫!」と安心するのではないでしょうか。
今回のトイザラスの件では、Amazon VSイーベイという場外の争いが加熱して、多忙になったアマゾンが一方的に契約を打ち切るという不運がありましたが、そもそもネット事業にAmazonだけに頼ってしまったのもトイザラスの失敗でもあります。
事前にAmazonの状況を予想できればよかったのですがそれはもう後の祭りです。
仮に新規市場にすぐ参入すると決めても
仮にトイザラスが早い段階で既存店舗を縮小してネット産業に力を入れたとしましょう。
トイザラスという大企業になった会社に対して、安定な利益を望む傾向が高い顧客からの反応はあまり印象はよくないと思います。
まだネット産業は大きくなく、100万ドル投資したとしても、結局市場が大きくならず10万ドルしか回収出来なければ、赤字が計上され、それが続くと撤退を余儀なくされ評価と株価が悪くなってしまいます。
さらに、既存店舗が縮小することで近くのトイザらスが閉店する光景を見るとより不安になりますね・・・
しかし、だからと言ってネット販売市場が大きくなってからの参入だと、すでにイートイズというベンチャー企業がシェアを大きく取っており障壁が高くなるのも事実です。
つまり、どっちも取れないジレンマから逃れられることは難しいです。
投資法への発展
業界を見るための望遠鏡
このトイザラスの件で特に考えて欲しいのが2つ
まずは「業界を見る為の望遠鏡」の存在です。
これはおそらくどの業界にも当てはまりますね。
その望遠鏡は既存のルール・・・その業界の詳しいところを見るのにすごく便利です。
重要な指標や目標達成などを用いることでさらに細かいポイントが見れます。
しかし、トイザラスで例えると今回の望遠鏡は「①小売業の②玩具の③店舗販売」用で、「①小売業の②玩具の③ネット事業」を見るには適していませんでした。
望遠鏡などを使ったことがあればわかりますが、街並みなどある程度近くの物はよく写せる望遠鏡もあれば、逆に星など遠くの物がよく写せる望遠鏡もあります。
逆に遠くのものは見えやすくても近くのものにはピントが合わず見えないこともよくあります。
つまり、指標などを使う時はその細かい業界のことまで考えて望遠鏡を選び、さらに調整を行ってようやく使えるということです。
新しい業界は既存のこの業界に似てるからほとんどこの指標で大丈夫はなかなかに危険ですね。
おまけに実際に望遠鏡と違ってある程度見えていると勘違いしてしまうことがより一層わかりにくくしています。
特にまだ見ぬ世界のことを考える時は既存の望遠鏡でいいと適当にしないように!!
任せきりなことはないか?
そしてもうひとつが「完全に任せていることはないか?」です。
投資にても、経営にしてもその道のプロはいます。
この材料が出たらこういう影響が・・や、この人がこう言っているから大丈夫など多くの意見があります。
実際に過去正しい分析などを行った実績などがあるので信頼されますね。
ただ、トイザラスの件ではまだ見ぬ事業の発展が発端でした。
人間将来のことは極力知りたくなるものですから「小売業に詳しい人」に意見を求めるのは自然のことです。
しかし、その詳しい人の考えがもしかしたら、既存の知識だけの意見の可能性もあります。
言わば小売業の専門家であってネット事業の専門家ではないということです。
そのまま情報を鵜呑みにした結果、まったく別の結果になり危険を回避出来なかった。
もちろんその意見を参考にしたので自己責任で済まされてしまいますね。
「既存の方法では正しい」なので嘘はついていません。
その方も悪気があって言っているとも限りません
リスク増加は良いニュースで埋もれる
さらに、実際の株価の動きとしてはネット産業が頭角を表した時、一気とは言わず、トイザラスの株価はじわじわ下がり始めていたと思います。
そこで株主は不安になると思います
しかし、トイザラスがネット産業に参入すると公言すると完全な出遅れの心配が無くなり期待から買われます。
さらにあの!Amazonと連携契約するの情報が入り「Amazonとやるなら安心だ」とさらに買いが入るでしょう。
ここで本当に考えてほしかったのは「Amazonが連携契約を解約する可能性」だったのですがAmazonとの連携ニュースという影に隠れてしまいました・・・
この段階でトイザラスの命運はAmazonに委ねられたも同義でした。
コントロールできない状態に陥るということはとてつもなく恐ろしいことです。
そして、Amazonの契約が解約された後、他の会社の買収などで対応しようとしましたが、もうお金がないことはバレバレでした。
財務のお金状況は基本嘘をつけないので、財務状態から見抜かれて後はもう沈没する船から逃げだす状況となりました。
このように一つのリスクがどんどん大きくなり気づけばもうお手上げという状況にはならないように気を付けましょう!!
まとめ
1 いつのまにか命運を他人に委ねてしまっているリスク
2 新規市場を見る時、既存の指標をそのまま使わない
3 リスク増加はよいニュースで埋もれる
参考図書ははこちら↓